喘息とは
喘息とは、ホコリや花粉、煙草などのさまざまな原因により、慢性的に気道に炎症が起こることで、息苦しい、痰が増える、咳が一度出始めると止まらないなどのさまざまな症状がみられる病気です。一口に喘息といっても、大きく下記の2つに分けられます。
気管支喘息
気管とは空気の通り道で、これが肺に至ると左右に枝分かれします。この部分を気管支と言います。この気管支が何かしらの原因によって慢性的に炎症が起きると、気管支の気道が狭窄し、呼吸がしにくくなります。これによって、「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」などの呼吸音(喘鳴)をはじめ、息苦しさ、咳、痰などの症状が現れるようになります。
咳喘息
咳喘息は、気管支喘息の一番の特徴である「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」などの喘鳴の症状を伴わない、長引く咳のことを指します。気管支喘息と同様、気道に炎症が起きることで発症します。「長引く咳」が主な症状の咳喘息ですが、適切な治療を受けないと、3~4割が気管支喘息へ悪化する呼吸器疾患ですので、咳が長引く場合は当院へご相談ください。
検査について
喘息が疑われる場合には、まず問診や聴診をします。その後、診断をつけるため、呼吸機能検査や痰検査やアレルギーを見るための血液検査のほか、胸部X線撮影も行うなどします。
喘息のアレルギー検査は、国が可能性の高い物質の検査をまとめた、CAP-16鼻炎喘息の項目を調べます。具体的な内容は以下になります。
季節性アレルゲン
- ハンノキ(1~5月)
- スギ(2~4月)
- ヒノキ(3~5月)
- カモガヤ(5~8月)
- ブタクサ(8~10月)
- ヨモギ(8~10月)
- ガ(初夏・秋)
- ユスリカ(初夏・秋)
通年性アレルゲン
- ハウスダスト1
- ヤケヒョウヒダニ
- ネコ皮屑
- イヌ皮屑
- カンジダ
- アスペルギルス
- アルテルナリア
- ゴキブリ
アレルギー検査では、喘息の原因がアレルギーであると判明した場合、そのアレルゲンを特定し、治療期間や方法など、治療の方針を定めることが可能です。
患者様に最適な治療を行うため、咳の原因を特定することが必要です。そのため、アレルゲンの検査をお勧めしております。
検査には採血が必要で3割負担の方は5,000~6,000円程度かかり、初診代+胸部レントゲン、呼吸機能検査も含めると1万円以上になります。当院では採血の施行については患者様とご相談してから行っております。検査について必ず採血を行うということではありませんので、ご安心ください。
喘鳴の原因は喘息以外にもあり、喘息はX線検査では異常がなく、X線検査で異常がある場合は他の疾患が考えられますので、その確認のために、胸部X線検査を行います。
治療について
同疾患の治療では、炎症を抑える薬と気管支を拡張する治療を行い、喘息発作を起こさないように長期的に治療を継続することが重要です。
治療薬には発作を予防するために毎日使用する長期管理薬と、発作時に使用する発作治療薬があります。
長期管理薬
- 吸入ステロイド薬(ICS)
- 強い抗炎症作用があります。効果が出始めるまで3~4日かかり、やめると効果がなくなるため長期間、毎日吸入する必要があります。吸入後は、口腔内カンジダ症などの副作用予防のためうがいが必要です。
- 長時間作用性β2刺激薬(LABA)
- 気管支拡張作用があります。吸入薬、内服薬、貼付剤があり、吸入ステロイド薬と併用します。
- 吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬配合剤
- 一度に吸入ステロイドとLABAが吸入できるためアドヒアランスの向上が期待できます。
- 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
- 気管支の収縮を促すアセチルコリンという物質の働きを抑えることで、気管支の収縮を抑えます。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
- 気道の収縮や炎症を引き起こすロイコトリエンという物質の働きを抑えます。
- テオフィリン徐放薬
- 気管支拡張作用と抗炎症作用があります。
発作治療薬
- 短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA)
- 即効性の気管支拡張作用があります。
- テオフィリン薬
- 気管支拡張作用と抗炎症作用があります。病院を受診した際には注射薬が使われることもあります。
その他の治療薬
高用量の吸入ステロイド薬や複数の薬を併用しても症状の安定しない重症喘息に対する新しい治療薬が登場しています。重症喘息は喘息全体の5~10%とされています。
- 抗IgE抗体:ゾレア®
- アレルギーが原因となる喘息の場合、抗原(アレルゲン)に対しIgE抗体と呼ばれる抗体が大量に作られます。このIgE抗体がアレルギー反応を起こすのを抑えることで気道の炎症を抑えます。体重や血液中のIgE濃度に応じた量を2週または4週に1回皮下注射します。
- 抗IL-5抗体:ヌーカラ®
- 白血球の一種である好酸球はIL-5という物質によって活性化され炎症を起こし、喘息を重症化させます。抗IL-5抗体はIL-5の働きを抑えることで好酸球の数を減らし炎症を抑えます。4週に1回100㎎を皮下注射します。
- 抗IL-5受容体抗体:ファセンラ®
- 好酸球を活性化させるIL-5が、好酸球にあるIL-5受容体に結合するのを妨げる薬です。さらに、直接好酸球を除去する作用もあります。血液中の好酸球数が多いほど効果が高いとされています。最初の3回は4週に1回、以降8週に1回30㎎を皮下注射します。
- 抗IL-4/13受容体抗体:デュピクセント
- リンパ球の一種であるTh2細胞やILC2という細胞が活性化されると放出される、IL-4、IL-13という物質の働きを抑えることで、これらの物質が直接気道に悪影響を及ぼしたり、他のアレルギー担当細胞を刺激して炎症物質を放出させたりするのを防ぎます。アトピー性皮膚炎の治療薬として販売されてきましたが、2019年3月に適応拡大が承認され、重症喘息に使用できるようになりました。初回600㎎、以降2週に1回300㎎を皮下注射します。
治療ステップ
喘息予防・治療ガイドラインでは喘息の治療は4つのステップに分かれています。
治療開始時に症状と治療状況からステップが決定されます。
コントロール良好な期間を長く保つことができれば治療のステップダウンができる場合もあります。調子がいいからといって吸入をやめてしまう患者さんが時々いらっしゃいますが、続けることで薬が減量できる可能性があること、やめてしまうと再び発作が起こってしまうことを理解していただく必要があると思います。また、長年吸入を実施されている患者さんでも、目の前で吸入していただくと正しくできていないことがあります。吸入薬の種類も増えているため、その人に合ったものに変更することも可能です。コントロール困難な重症喘息と考えられている例の80%は吸入手技やアドヒアランスの問題でコントロール不良となっているとも言われており、正しく治療を続けていただくために吸入指導が重要であると感じています。