予防接種とは
当院では予防接種も行っています。そもそも予防接種とは、体内にワクチンを注入していくのですが、そもそもワクチンとはある感染症の病原体(細菌、ウイルス 等)の病原性を極力弱める、あるいは無力化したものです。これを接種することで、特定の感染症に対して免疫がつけられるようになります。その後、同様の病原体が体内に侵入したとしても、発症しにくくなるか、発症しても軽度な状態で済むようになります。
ワクチンについては、自身の身を守るために行うというという目的もありますが、必ずしも皆がワクチンを接種できるというわけでもありません。そのため、このような方々が感染(市中感染)しないようにするために接種する社会的使命という意味合いもあります。
なお当院では、主に以下のワクチン接種を行っています。
小児定期接種
インフルエンザ
ワクチン
- 成人
- 小児
手洗いやマスクの着用などインフルエンザを予防する対策はいくつかありますが、その中でも有効とされているのがインフルエンザワクチンの接種になります。
単に同ワクチンの接種と言いましても接種時期も大切です。日本では毎年12月~翌3月くらいにかけて流行します。1回の接種による持続効果期間は約5ヵ月、接種後に効力が発揮するまでに2週間程度の経過が必要となります。そのため、1回の接種で高い効果を期待される場合は、流行のピークとなる1月を迎えるより前とされる12月中旬頃までには接種されるようにしてください。
肺炎球菌ワクチン
- 成人
日本人の死因第5位(厚生労働省:令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況)に挙げられる肺炎ですが、死亡された方の9割以上が65歳以上の高齢者です。また成人が肺炎を発症する原因で最も多いとされているのが肺炎球菌です。
そのため、高齢者等の肺炎球菌ワクチンの接種は定期予防接種扱いになっており、市区町村の各自治体では、同ワクチンに対する費用の一部を公費負担としています。ちなみにこの場合は、高齢者すべての方を対象としてはいません。これまで23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)を接種されている方は対象外です。詳細につきましては、市川市の公式ホームページをご覧ください。
なお定期予防接種の対象にならない方であっても同ワクチンを接種すること自体は可能です(全額自己負担となります)。ただ再接種を希望される方で、前回の接種から5年以上が経過していない状態で受けられると接種後に注射部位より強い痛みが出るようになると言われています。
新型コロナワクチン
- 成人
- 小児
新型コロナワクチンの接種を希望される場合、現時点では区から送付される「接種券」が必要となります。接種券がないと同ワクチン接種を予約することはできません。
詳細は区の公式サイトをご覧ください。
帯状疱疹ワクチン
- 成人
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、これまでに水ぼうそう(水痘)に罹患したことがある方に発症する病気です。水ぼうそうの原因でもある水痘・帯状疱疹ウイルスは、体内に一度侵入すると体外に排出されることはありません。症状が治まると神経節に潜伏するようになります。その後、加齢や過労などから免疫力が低下すると同ウイルスが活性化し、左右どちらかの神経支配領域に沿って、痛みや皮疹(紅斑、小水疱、痂疲等)がみられるようになります。皮膚症状に関しては3週間程度で治まるようになりますが、高齢者が罹患、あるいは痛みが強く出たという場合、いつまでも神経に痛みが残ることがあります。発症から3ヵ月を経過しても続く痛みのことを帯状疱疹後神経痛と言います。こうした状態にならないよう、あらかじめ帯状疱疹を予防するために接種するのが帯状疱疹ワクチンです。対象となるのは発症率が上昇するとされる50歳以上の方としています。
なお帯状疱疹ワクチンは2種類(ビゲン、シングリックス)ありますので、接種を希望される場合、どちらかを選択する必要があります。それぞれの特徴は次の通りです。
ビゲンとは
水痘・帯状疱疹ウイルスの病原性を極力まで弱めた(弱毒化した)生ワクチンになります。接種回数は1回になります。60歳以上の方が接種すると(帯状疱疹の)発症率が半減するとされ、帯状疱疹後神経痛を発症する確率も帯状疱疹ワクチンを接種しない人と比べると3割程度まで減少するという報告もあります。1回の接種での有効持続期間は8年程度と言われています。接種による副反応としては、注射部位の腫れ、痛みやかゆみといったものがありますが、多くは2~3日で解消されるようになります。なお同ワクチンは、免疫機能に低下がみられる方に使用することはできません。
シングリックスとは
このワクチンは、遺伝子組み換えによって作られた不活化ワクチンになります。計2回の接種が必要で、1回目の接種後、2ヵ月程度間隔を空けてから2回目の接種となります。費用は高額ですが、50歳以上の方で約97%、70歳以上の方でも約90%の発症予防効果があると言われています(生ワクチンは約50%)。また1度の接種による持続効果期間は10年以上となっています。
また副反応に関してですが、注射部位に腫れや痛みが強く出やすいということがあります。このほかにも、筋肉痛、疲労感、頭痛といった全身症状もみられるようになります。
帯状疱疹ワクチンの接種費用について
帯状疱疹ワクチンは任意接種となりますので、費用は全額自己負担となります。ただ、当院の所在地でもある杉並区、お隣の中野区では費用の一部を公費負担としています。それぞれの区の費用助成に関する内容は以下の通りです。
杉並区の公費助成について
当院は、杉並区が実施している帯状疱疹ワクチン接種の契約医療機関でもあります。費用助成の対象となるのは、接種日の当日に杉並区に住民登録のある50歳以上の方になります。なお同区の費用助成が受けられるのは、どちらのワクチン(ビゲン、シングリックス)を選択しても一度きりとなります。助成額に関しては、ビゲン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)が5,000円(1回限定)、シングリックス(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)が1回あたり10,000円です(計2回まで)。
なお費用助成を受けるにあたっての手続きですが、当院に予診票がありますので、事前に必要な手続きはありません。予約の日時をご連絡いただき、接種日当日は受付(窓口)において、杉並区の住民であることを証明する書類等(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証
など)をご持参ください。接種後は受付(窓口)にて、助成額を引いた額をお支払いください。詳細については、杉並区の公式サイトをご参照ください。
中野区の公費助成について
中野区では、同区にお住まいの50歳以上の区民を対象に帯状疱疹ワクチンの接種費用の一部助成を行っています。接種前にどちらのワクチンを接種するかを決めますが、ビゲン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)、シングリックス(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)のどちらを選んだとしても生涯で1度きりの対象となります。助成金額については、ビゲンが4,000円(1回限定)、計2回の接種が必要とされるシングリックスが1回あたり8,000円(2回まで適用)となります。
なお当院は、中野区が実施する帯状疱疹ワクチン接種の契約医療機関ではありません。そのため対象となる中野区民の方が当院で同ワクチンを接種する場合、受付で費用を全額お支払いいただきます。その後、一部助成金額に関しては事後請求の申請となります。
手続きとしては、「中野区帯状疱疹任意予防接種費用助成申請書」(中野区の公式サイトでダウンロードできます)に必要事項を記入し、接種内容が確認できる医療機関の領収書、助成を受ける予防接種の記録が必要となります。これら書類を申請期限までに中野区保健所に郵送します。詳細については、中野区の公式サイトをご参照ください。ちなみに事後請求では、指定した金融機関口座に一部助成金額が振り込まれるまで2ヵ月程度かかるとしています。
おたふくかぜ
ワクチン
- 小児
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の原因とされるムンプスウイルスに感染し、発症すると発熱や耳下腺に腫れがみられるようになります。感染力が強いのが特徴で可能性は低いものの重症化すると脳炎や難聴といった後遺症を引き起こすこともあります。
おたふくかぜワクチンは小児の任意予防接種で、生ワクチンによる皮下注射となります。任意なので全額自己負担となります。計2回の接種が必要で、1歳から接種可能で、2回目は5歳以上7歳未満の間に接種するようにします。
MRワクチン
(麻疹・風疹混合ワクチン)
- 小児
麻疹と風疹を予防するワクチンです。麻疹とは一般的にはしかと呼ばれています。感染力が強いのが特徴で、麻疹ウイルスに感染することで、発熱、咳、目やに、発疹などの症状がみられるほか、肺炎や中耳炎などの病気を併発することもあります。風疹は、風疹ウイルスに感染することで、発疹、発熱、リンパ節の腫れなどの症状がみられますが、3日程度で症状が治まるので3日はしかとも呼ばれています。このように症状はそれほど重くないのですが、妊娠初期の女性が風疹に罹患し、胎児に感染すると先天性風疹症候群をもって生まれる可能性があるので注意が必要です。なお、麻疹・風疹混合ワクチンはすべての小児を対象とした定期接種としての歴史が浅いこともあって、20~40代の感染者が多いのも特徴です。
麻疹・風疹混合ワクチンは、小児の定期予防接種で計2回の接種が必要です。同ワクチン接種の推奨期間は、1歳~2歳の誕生日前に1回、5歳~7歳の誕生日前までに1回の接種としています。
小児用肺炎球菌
ワクチン
- 小児
小児の肺炎球菌による感染症(細菌性髄膜炎など)を予防するために行われるもので、これは不活化ワクチンによる皮下注射となります。小児の定期予防接種です。同ワクチンを接種することで、13種類の肺炎球菌による感染症について重症化のリスクを低減させると言われています。なお定期接種の推奨年齢ですが、生後2~4ヵ月の間に3回、12~15ヵ月までに1回の計4回の接種になります。
ヒブワクチン
- 小児
Hibとはインフルエンザ菌b型の略称ですが、インフルエンザウイルスとは別のものです。小児の定期予防接種で不活化ワクチンによる皮下注射になります。接種することで細菌性髄膜炎や喉頭蓋炎などの病気を予防できるようになります。定期接種の場合は計4回の接種が必要で、生後2~4ヵ月の間に3回、12~17ヵ月までに1回打つ必要があります。
B型肝炎ワクチン
- 小児
B型肝炎を予防するために接種します。小児の定期接種で、この場合は生後2~3ヵ月の間に2回、7~8ヵ月までに1回の計3回打つ必要があります。同ワクチンは定期接種化されたのが2016年ということもあって、すべての年齢で接種が推奨されています。なお定期接種対象者以外は全額自己負担です。
ジフテリア・破傷風
- 小児
2種混合ワクチンとも呼ばれ、ジフテリアと破傷風の病気を予防するワクチンになります。これは小児の定期予防接種で、不活化ワクチンによる皮下注射になります。これは四種混合ワクチン(ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ)を乳幼児に接種してからの追加接種となります。定期接種では11歳~13歳未満の間に1回の接種が推奨されています。
四種混合ワクチン
- 小児
ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオの4つのワクチンが混合していることから四種混合ワクチンと呼ばれています。これら4つの病気を予防するためのもので、不活化ワクチンによる皮下注射となります。これも小児の定期接種で、この場合は生後3ヵ月~2歳の誕生日前までに計4回の接種を受けるようにします。
日本脳炎ワクチン
- 小児
日本脳炎を予防するために行われる小児の定期接種で、不活化ワクチンによる皮下注射になります。定期接種での推奨年齢と接種回数は、3歳から5歳未満の間に3回、9歳~13歳未満の間に1回の計4回です。
なお日本脳炎は蚊(アカイエカ)が媒介するウイルスに感染することで発症し、高熱や頭痛、嘔吐のほか、意識障害やけいれんといった症状がみられます。人によって知覚障害や運動障害といった後遺症が残ることもあれば、亡くなってしまうこともあります。
水ぼうそう(水痘)
ワクチン
- 小児
水ぼうそうを予防するためのワクチンで、生ワクチンによる皮下注射となります。小児の定期接種でもあり、計2回の接種が必要です。推奨期間ですが、1歳の誕生日を迎えた日から3ヵ月以内に1回目を打ち、1回目の接種から半年~1年の間に2回目を打ちます。
ロタウイルス
ワクチン
- 小児
ロタウイルスによる感染性胃腸炎を予防するためのワクチンです。接種の前に1価(ロタリックス)もしくは5価(ロタテック)のどちらかのワクチンを選択します。1価の場合は計2回、5価の場合は計3回の接種が必要です。どちらも生後6週から接種可能で2(3)回目は1(2)回目の接種から4週間以上開けます。1価は生後24週目まで、5価は生後32週目までに接種を終えるようにします。